ー狼ー

俺の力が
強くなっているようだ。
 
今日、この体を乗っ取ってしまった。
昨日、満月に力を少し取られた。
満月がおかしくなったのはそのせいだ。
 
前からあいつは少し異常だった。
 
俺のせいなのかもしれない。
 
俺はあいつを助けなきゃならない。
 
それは
 
義務だ。
 
俺はあいつを救う。
 
この命を賭けても。

ー満月ー

満月が…
おかしい…
 
最近、気づいたら移動していることがある。
友人としてない筈なのに、ケンカした
 
満月の何かが変わりつつある。
最近、満月の怒りのバロメーターみたいなのが、
どんどん小さくなってる…?
 
変だ。
何かが変だ。
 
満月…
何があったの…?
 
満月は答えてくれない。
何でもないと、
はぐらかす。
 
私は彼を…
私自身を救うことが出来ないのだろうか?

◇◆砂糖と塩◆◇

日が砂の中に落ちていく。
「カナック、起なさい。」
私はさっき拾ったカナックに呼びかける。
「…だ、れ?」
カナックは人語を理解し話すことが出来る数少ない崇高な生物だ。
そのため、密売しているやつらがいる。
「私は杏奈。あなた、死にかけていたのよ?」
あの時のカナックの姿を思い出すと死んだ姉を見ているようで胸が痛い。
「ありがと…あ、杏奈さん。」
「さん付けしなくていいから。」
私はカナックを見つめる。
「僕はヤラ。よろしく、杏奈!」
ヤラは目を細めて笑った。
私は着ていた長い上着を脱ぎ、足にかけた。
すると、ヤラは私の髪をじっと見つめる。
「杏奈の髪…長い赤毛なんだ。珍しい。しかも…その服は他の砂漠の民族衣装?」
「ああ。この服は旅先の人に貰ったの。」
私は気付かないうちに、微笑んでいたかもしれない。
ーもうすぐ、夜が始まるー
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
続く

◇◆砂糖と塩◆◇

私は白い世界の中に黒い影を見つけた
「カナック…か?」
キツネのような耳、ネコのような尻尾、体はウサギぐらいの大きさの生き物だ。
 
動いた。
 
「まだ生きてる…?」
私は小さなカナックに持っていた最後の水を飲ませた。
そして、肩に掛けていた大きなバッグのポケットに滑りこませた。
「死ぬなよっ…!」
私にはそう言って小さな体の生命力を信じるしか出来なかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
続く

◇◆砂糖と塩◆◇

白い…血。
そういうのが相応しい。
白い世界。
「塩…か?」
だが吹いてくる風が口に入ると甘く広がった。
 
ー砂糖だ。ー
私は小さく呟く。
だが言霊は白い粉に吸い込まれ、消える。
「砂糖の砂漠…なのか。」
私はそう言って真っ白な砂の上を歩き続けた。
◇◆◇◆◇◆◇
続く